旅拝

過去の旅の記録です。

四国巡礼編(17)修行の道場(9)延光寺(39番札所)

 【修行の道場(高知県)】



 お遍路20日目。
 39番札所延光寺までのルートは幾つか選択肢がある。昨日一晩考えた後、月山(つきやま)神社(高知県幡多(はた)郡大月町)(番外霊場)を参拝してから延光寺を打つことにした。

※番外霊場:四国88ヶ所霊場の巡拝者が立ち寄ることが多い寺社・修行場・霊跡(れいせき)等(小さな祠(ほこら)やお地蔵様等も含む)で、成立の縁起に弘法大師との関わりが深いところが多い。

 月山神社の存在を知ったのは、『四国遍路ひとり歩き同行二人』[地図編]だった。
 ここに月山神社に関する記述がある為、下記に一部引用させて頂く。



 遍路修行の道

 古来、金剛福寺を打ち終えた遍路は、次のいずれかの道程を選ぶことを不文律としてきたと伝えられている。

1. 打ち戻って延光寺から篠山(ささやま)詣りをする。
2. 月山詣りを終えて延光を打つ。

 愛媛県一本松町札掛は、篠山詣りを果たせなかった遍路が、この地に札を掛け篠山を遙拝(ようはい)して去った名残(なごり)の地名となった。



 (以上、引用)

※篠山詣り:現在、日本三百名山に選定されている篠山(愛媛県北宇和郡津島町・南宇和郡一本松町高知県宿毛(すくも)市)(標高1065m)山頂に鎮座する篠山三所大権現(篠山権現)を参拝すること。明治時代の神仏分離令により、山頂の篠山権現は篠山神社に改称した。

篠山神社:番外霊場



 道中、国道321号が土砂崩れにより通行止めになっていた為、海沿いの道を歩いた。
 海岸線沿いに歩く為、入り江になっていると直進出来ずに迂回する形になる(カタカナの「コ」の字を下から上に一筆書きするようなルートを通る)。
 直線距離の数倍の距離を歩くことになる為、もどかしさを抱えながら歩く。ようやく次の岬の先端部分に到達すると、同じように次の入り江が存在することを確認(「またか」と力が抜け、しばし佇(たたず)む)。この繰り返しは正直きつかった。

 当時の旅日記には「人生は海岸線だ」と書き記している(少し先の未来・目標・課題だけ見え、到達・クリアするとが見えるということだろう)。



 午後16時半頃に月山神社に到着。

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 月山神社は、明治時代の神仏分離以前には「守月山月光院南照寺」と称した(御本尊:勢至(せいし)菩薩)。
 開基は役小角(えんのおづの)(役行者(えんのぎょうじゃ))とされ、山中で月影の霊石を発見し月夜見命(つくよみのみこと)、倉稲魂命(うかのみたまのみこと)を奉斎したことに始まる。
 その後、弘法大師が霊石の前で二十三夜月待の密供(みっく)(密教で諸尊を供養する修法)を行ったと伝えられている。

 宮司さんのお話では、御神体の三日月形の石は裏山に鎮座しているということだったが、夕方だったこともあり参拝せず先を急いだ(この記事を書くにあたりネットで調べたところ、本殿裏の石段の上に鎮座しているとのこと)。

月山(がっさん)神社(山形県東田川郡庄内町)(月山(山形県鶴岡市東田川郡庄内町・最上郡大蔵村西村山郡西川町)(標高1984m)(日本百名山)山頂に鎮座)と関連があるか分からないが、後年出羽三山(山形県)の情報を得た際、無性に行きたくなって実際に何度か参拝している。



 この日は久しぶりに民宿に泊まることにした(居酒屋&宿 幡多郷(はたご)、1泊素泊まり2500円)。
 月山神社から約14kmの道のりを、日が暮れてからもひたすら歩いた。



 高知県に入ってから札所間の距離が長くなったこともあり、暗闇の中夜遅くまで歩く機会も増えた。
 ただ残念なことに、日没後に歩いた場所については道中の風景を覚えていない。これは他の方のブログ(お遍路ブログ)を拝読して気付いたことだ(こんなに素晴らしい景色があったのかと驚くばかりだ)。

 「観光」とは光を観ると書く。「 sightseeing 」(観光)は光景・名所・観光地を見るという意味になる。
 我々が普段目にする光景は、(ほとんど)太陽光線が物体に当たって反射した光を知覚したものだ。従って、夜の闇の中で観光するのは難しい。
 この旅は観光旅行ではないが、先を急ぐあまり大切なものを見落としていたような気がする。



 午後21時過ぎに宿に到着。到着が遅い為、宿のご主人に心配をかけてしまったことをお詫びした。
 お風呂に入り、洗濯をして就寝。この日は初めて歩行距離が50kmを越え疲労が溜まっていたのか、深い眠りについた。



 [第39番札所:赤亀山(しゃっきざん) 寺山院(じさんいん) 延光寺]

・御本尊:薬師如来
・創建年:(寺伝)神亀元年(724年)
・開基:(寺伝)行基
・住所:高知県宿毛(すくも)市



 お遍路21日目。
 昨日50km以上歩いた疲れからか、いつものように朝早く起きれなかった。雨が降っていることを言い訳にして眠り続けた。宿の出発時刻は確か午前10時頃だったと思う。
 本日の目的地39番札所延光寺までは宿から約20km。慌てることはない。



 午後16時半過ぎに「修行の道場」最後の霊場となる延光寺に到着。

 延光寺の寺伝によると、神亀元年聖武天皇の勅命を受けた行基が、安産・厄除けを祈願して刻んだ薬師如来像を御本尊として本坊他十二坊を建立し、当初は「亀鶴山(きかくさん)薬院(やくいん)(せやくいん)宝光寺と称したという。

 後に延暦年間(782年~805年)に弘法大師がこの地を訪れ、桓武天皇の勅願所として日光・月光菩薩を彫って安置し、七堂伽藍を整えたとされている。
 この時、大師が錫杖(しゃくじょう)で地面を突いて湧き出た霊水が、今日に伝わる「眼洗い井戸」(眼病に効くとされている霊水)である。

 その後、延喜11年(911年)に赤い亀が境内の池から消えたが、やがて銅の梵鐘(ぼんしょう)(釣鐘(つりがね))を背負って竜宮城から戻って来たので現在の山号、寺号に改めたという。

 明治の神仏分離令で一時廃寺となったが、その後再興された。

 (写真は、赤亀と梵鐘の石像)

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 この日は亡くなった家族の命日だったこともあり、ここで冥福を祈った。

 その後、ご住職にお願いして通夜堂に泊まる許可を頂いた(感謝)。
 夕食を食べて早めの就寝。

 明日はいよいよ菩提(ぼだい)の道場(愛媛県)に入る。





(旅した時期:2006年)

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