旅拝

過去の旅の記録です。

四国巡礼編(4)発心の道場(3)焼山寺(12番札所)

 【発心(ほっしん)の道場(徳島県)】



 [第12番札所:摩廬山(まろざん) 正寿院(しょうじゅいん) 焼山寺(しょうざんじ)]

・御本尊:虚空蔵(こくうぞう)菩薩
・創建年:(寺伝)弘仁6年(815年)
・開基:(寺伝)役小角(えんのおづぬ(おづの、おつの))(役行者)(えんのぎょうじゃ)
・住所:徳島県名西(みょうざい)郡神山町



 寺伝によると、大宝年間(701年~704年)に役小角が開山し、蔵王権現を祀(まつ)ったとされている。
 その後、弘法大師がこの地を訪れた際、神通力を持ち火を吐いて村人達を襲っていた大蛇を岩窟に封じ込めた。
 大蛇によって焼かれた山ということで、大師が「焼山寺」と名付けたと言われている。



 3日目の朝、早朝5時半過ぎに鴨島温泉鴨の湯善根宿を出発。
 まずは11番札所藤井寺(ふじいでら)へと向かう。道中朝陽を拝んだ。

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 藤井寺に着き、本堂大師堂にて納経(お経を唱えた)。
 いよいよこれから12番札所焼山寺への遍路道(焼山寺道)を歩くことになる。藤井寺(標高40m)から焼山寺(標高700m)までは全長12.9km( Wikipedia より)。アップダウンを繰り返す。
 一般的な目安としては6時間程かかるようだ(実際約6時間で焼山寺に到着したが、雨天の場合は道がぬかるんで更に時間がかかると思われた)。

 昨日鴨の湯の善根宿でベテラン遍路の方に聞いた話では、ここは遍路道の中でもお大師様(弘法大師)が歩かれた当時(約1200年前)に近い状態で残されている道とのことだった(もちろん地元の方により歩きやすいように補修・整備されている)。
 
 道中、お地蔵様(石仏)が祀(まつ)られていた。
 この後遍路道を何度も歩くことになるが、道中見かけた墓石やお地蔵様は(全てとは言えないが)そこで亡くなられた歩き遍路のお墓かと思われた。
 古(いにしえ)のお遍路達は死を覚悟しながら何を思いこの地を歩いたのだろうか。



 しばらく歩くと長戸(ちょうど)(御本尊:弘法大師)(番外霊場)に到着した(標高440m、藤井寺より3.2km)。

※長戸庵の由来:弘法大師焼山寺へ向かう道中、最初の休憩時に通りかかった老人に加持を施し、老人の足の痛みを治した。
 老人は修業山長戸大師堂と名付けた仏堂を建て弘法大師像を祀(まつ)った。
 長戸庵の「ちょうど」は、一息入れるのに「ちょうど塩梅(あんばい)良き」場所ということらしい。

※番外霊場:四国88ヶ所霊場の巡拝者が立ち寄ることが多い寺社・修行場・霊跡(れいせき)等(小さな祠(ほこら)やお地蔵様等も含む)で、成立の縁起に弘法大師との関わりが深いところが多い。

 荷物が重いが、まだ体力に余裕がある。少し休憩して先に進んだ。



 長戸庵から柳水(りゅうすい)(御本尊:弘法大師)(番外霊場)(標高500m)までは3.4km。

※柳水庵の由来:自身で彫った弘法大師像を納めた場所。休憩時に水が無かった為、弘法大師が柳の枝に加持を施して堀ったところ、水が湧き出した(「柳の水」と呼ばれる湧水がある)。

 柳水庵には宿泊施設(民宿?)のような建物があったが、無人となっていた。
 ここで軽く食事休憩を取ってから、再び歩き始めた。



 柳水庵から次の仏堂浄蓮(じょうれん)庵(一本杉庵)(御本尊:阿弥陀如来)(番外霊場)までは2.2km。ここは標高745mで、焼山寺道の最高地点らしい(この後一旦下ってから再び上って焼山寺(標高705m)へと向かう)。

※浄蓮庵の由来:正式名称は、一宿山(いっしゅくざん)浄蓮庵弘法大師が、ここでの仮眠時に夢に出現した阿弥陀如来像を彫って納めた。
 弘法大師お手植えという「左右内の一本杉」(徳島県指定天然記念物)(樹高約30m、幹周7.62m)があることから、一本杉庵とも呼ばれる。

焼山寺焼山寺山(しょうさんじさん)(標高938m)の八合目付近にあり、88ヶ所霊場の中で3番目に標高が高い。

※標高の高い札所ランキング(本堂の位置で比較)

 (1位)66番札所雲辺寺(うんぺんじ)(標高900m)
 (2位)60番札所横峰寺(標高745m)
 (3位)12番札所焼山寺(標高700m) ※この記事
 (4位)45番札所岩屋寺(標高585m)
 (5位)44番札所大寶寺(大宝寺)(だいほうじ)(標高560m)
 (6位)21番札所太龍寺(たいりゅうじ)(標高505m)
 (7位)20番札所鶴林寺(かくりんじ)(標高495m)
 (8位)88番札所大窪寺(標高450m)
 (9位)27番札所神峯寺(こうのみねじ)(標高430m)
 (10位)65番札所三角寺(標高355m)

 焼山寺道の最高地点ということもあり、ここに辿り着くまでの上りが焼山寺道の中で一番きつかった思い出がある。

 ここでは、大杉(一本杉)の下に建てられた弘法大師が参拝者を迎えてくれる。
 到着時立派な大杉に圧倒されたが、その下でお大師様が優しく迎えてくれたような気がした。

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 ここで再び食事休憩を取った後、出発した。



 浄蓮庵から焼山寺までは4.1km。まずは左右内(そうち)集落(標高400m)まで一旦下る。
 左右内集落には菜の花等の春の花が咲いており、元気をもらった。
 そこから焼山寺まで再び標高差300mを上らなくてはならないのだが、不思議と力が湧いてきた。



 後日の話になるが、昨晩会ったベテラン遍路に再会した際焼山寺への遍路道でお大師様の声を聴いたかい?」と言われた。
 鴨の湯の善根宿では教えて頂けなかったのだが、お大師様が歩かれた当時の状態が保たれているこの遍路道では、お大師様が歩き遍路にエールを送ってくれるらしい。

 その話を聞いた時、思い出すと(そうあって欲しいという自分の願望も含まれていたかもしれないが、)その声を聴いたような気がした。
 それは最後の杉林を抜けるところで、お大師様に歩くエネルギーを頂いた感覚があり、足取りが軽くなったのを覚えている(単にゴールに近付いてテンションが高くなったからかもしれないが)。



 焼山寺には正午過ぎに到着した。既に多くのお遍路さん(団体ツアーの方々)が境内にいて、私の荷物を見て労(ねぎら)いの言葉をかけて下さる方が多かった。

 やはり、山寺の雰囲気は好きだ。街中にあるお寺と比べ参拝するのは大変だが、山の気に包まれて気持ちが良い。

 (写真は、山門(仁王門))

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 この日一番大変だったのは、焼山寺からの歩きだった。
 13番札所大日寺へと向かうに当たり、遠回りになるが遍路道(山道)を歩かずに一旦国道438号へ出ることにした(大日寺までおよそ26km)。
 アスファルトの道の方が歩きやすいだろうという判断だったが、既に疲労が蓄積されており、下りを歩くのがつらかった。踏ん張りが効かず、歩くペースが落ちていく。

 結局この日(3日目)は、日没後周囲が暗くなるまで歩き、この旅初めてのテント泊をした。





(旅した時期:2006年)

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